Ariana Grandeはニコロデオンのアイドル的存在として2013年にデビューして以降、紆余曲折ありながらも実に珍妙なキャリアを歩んできた。そんな彼女はいまや最も重要なポップスターの一人である。単純に記録だけを見ても、先日リリースされた最新作『thank u, next』からの3曲がBillboard Hot 100でTOP3を独占するというThe Beatles以来の快挙も成し遂げている。 Ariana Grandeは他のポップスター達とは一線を画す、勇敢で、奇妙で愉快な、思慮深い人間味のあるポップスターである。この5年間、彼女は私たちに様々なことを教えてくれたが、その中で最も重要なメッセージは 「時に間違いを犯しても構わない。完璧でなくて良い。でも自分に正直であれ」 ということだった。 完璧を求められる女性ポップスター 女性のポップスターとして大成するには「完璧」でなければいけない、そう私たちは思い込まされてきた。それはMadonnaやBeyonceにしても、もしくは2010年代を代表するポップスターTaylor Swiftにしてもだ。常にヒット曲を出し続け、若々しいルックスを保ち、完ぺきなパフォーマンスをし、政治的社会的思想すべてにおいて尊敬できる行いをする「フルパッケージ」な存在であることがメインストリームで活躍する女性には求められてきた。もしも彼女たちがそこから一歩でも踏み外せば、途端に批判にさらされる。私たちはそんな例をいくつも見てきた。 そうしたフルパッケージなポップスターと一線を画すアーティストとしてRihannaが思い浮かぶかもしれないが、実は彼女こそ「完璧」なアーティストである。彼女には一切隙がない。「Rihannaを批判することで、逆にその人のブランドが傷つく、もしくは思考の浅はかさが露呈される」という次元にまで自分のブランドを構築してきたアーティストがRihannaである。では本当に「完璧」でなければいけないのだろうか。インディーでは、良いアルバムさえリリースできれば、完ぺきであることは求められない。メインストリームでの地位を確立したヒップホップ・アーティストにはむしろ完ぺきさが求められていない。その隙や弱さ、時に犯した過ちが逆にアーティストの魅力ともなり得る。 Ariana Grandeが2013年に、"T
2010年代の重要アーティストを紹介しています。
2010年代を象徴する新世代のラッパーとしてシーンを牽引したA$AP Rockyはヒップホップを革新し、新たな領域へと導くことに成功した。その革新は音楽的側面のみならず社会的側面にまで及ぶ。2016年、彼はオーヴァードーズで自身の姉を亡くしている（彼の想いは最新作『Testing』収録の"Purity"でも綴られている）が、彼はドラッグをしないことを公言してもいる。また、彼は2015年の時点で『SHOWstudio』とのインタヴューの中で、フェミニズムに対して理解を示している。「主に、この世界は男性優位だ。いつかは、みんな『あぁ、彼女はヴァギナがあるから、彼女にはできないよ。彼にはできるけどね』みたいな考えを気にすることはなくなると思うよ。前にも言ったことがあるけど、変わり始めているんだ」
A$AP Rockyはそのキャリアの中で、ホモフォビアではないかという批判を受けることもあったが、明らかな誤解である。キャリアの初期である2011年の時点で、「かつてはホモフォビックだった」と認めたうえで、『Complex』に自身の意見を語っている。「ホモフォビックでいれば多くの時間と友情を失うことになるだろう。セクシャリティー的な意味での一種の人種差別主義者ってことだからね」彼は2013年にも『Interview』誌に改めてLGBTをサポートする発言をしている。「2013年だぜ。恥ずかしいよ。今でもみんな、この話題で興奮してるんだからさ。クレイジーだ」
A$AP Rockyの独自性は、彼の社会的意義を持った発言、もしくはプラダからアレキサンダー・ワンまで様々なブランドを着こなすファッションアイコンとしての存在のみならず、音楽性にまで及ぶ。デビュー作の時点で、Florence WelchやSkrillexと言ったジャンルを跨いだアーティストとのコラボレーションで、彼はヒップホップのアウトサイダー的立ち位置を築いている。さらなるセカンド作では、ストリートミュージシャンだったJoe Foxをその場でスカウトして多くの曲で起用する大胆さを見せながら、自身の音楽性をさらに飛躍させている。勿論Rod StewartやMobyなどのサンプリングでの引用を耳にすれば、彼の音楽的素養の深さは自ずと明らかになってくるだろう。
彼が愛されるラッパーとなった理由を語るのに、これらはもしかしたら必要ないかもしれない。彼は自分が何者かわかっている。彼のラップは常に冷静だが、その冷静さはステージ上でも変わることがない。しかし、それがアーティストとしての彼の価値を下げることにはならない。むしろそれが、彼のブランドとなった。「知らないやつのために、前言ったことを繰り返すけど、俺はこれまででマジで最高のアーティストだぜ」
A$AP Rockyはただラップをするためにラップをしているわけではない。彼は常に未来を見据えている。天才がゆえに時に迷走するKanye Westに不安を感じたとき、別にKanye Westと比較しているわけではないのだが、私たちにはA$AP Rockyがいることを思い出そう。
参考記事
・A$AP Rocky Takes Us To Hometown Harlem Block Where His Brother Was Shot (MTV)
・Who is ASAP Rocky? (Complex)
・14 Male Allies To The LGBTQ Community (Billboard)
・Interview: Joe Fox Talk Working With A$AP Rocky and How He's Handling His Sudden Fame (Complex)
19. Phoenix (2013) Produced by Danger Mouse
18. Angels (2013) Produced by Amsterdam
17. Telephone Calls feat. Playboi Carti, Tyler, The Creator & Yung Gleesh (2016) Produced by Plu2o Nash
16. Cocky feat. Gucci Mane & 21 Savage (2018) Produced by Hector Delgado & London On Da Track
15. Fashion Killa (2013) Produced by The-Dream, A$AP Rocky, Friendzone & Hector Delgado
14. Brand New Guy feat. Schoolboy Q (2011) Produced by Lyle Leduff
13. Praise The Lord (Da Shine) feat. Skepta (2018) Produced by Skepta
12. Jukebox Joints feat. Joe Fox & Kanye West (2015) Produced by Che Pope & Kanye West
11. Purity feat. Frank Ocean (2018) Produced by Finatik N Zac, Dean Bluny, A$AP Rocky & Hector Delgado
10. Long Live A$AP (2012) Produced by Dr. Dre, Jim Jonsin & Rico Love
09. Multiply feat. Juicy J (2014) Produced by Curtis Heron
08. Peso (2011) Produced by Jimmy Jam & Terry Lewis & A$AP Ty Beats
07. Lord Pretty Flacko Jodye 2 (LPFJ2) (2015) Produced by Nez & Rio
06. Wild For The Night feat. Skrillex & Birdy Nam Nam (2013) Produced by A$AP Rocky, Birdy Nam Nam & Skrillex
05. L$D (2015) Produced by Finatik N Zac & Jim Jonsin
04. A$AP Forever feat. Moby (2018) Produced by Hector Delgado & A$AP Rocky
03. Goldie (2012) Produced by Hit-Boy
02. Everyday feat. Rod Stewart, Miguel & Mark Ronson (2015) Produced by Emile Haynie & Mark Ronson
01. Fuckin' Problems feat. Drake, 2 Chainz & Kendrick Lamar (2012) Produced by 40 & Drake
A$AP Rockyの略歴
A$AP Rockyとして知られる彼は、ニューヨーク州ニューヨークシティ出身のラッパーである。本名をRakim Mayersと言うA$AP Rockyはヒップホップ集団A$AP Mobのメンバーで最も成功した人物である。彼のファーストネームは、かつてのヒップホップ・デュオEric B. & RakimのRakimに因んでつけられている。2011年にリリースしたデビュー・ミックステープ『Live. Love. A$AP』が音楽評論家から絶賛されたことをきっかけにレコード契約を結ぶと、2013年にリリースしたデビュー・アルバム『Long. Live. A$AP』が大ヒットとなり、全米アルバムチャートBillboard 200の首位を獲得する。さらにアルバムからのセカンド・シングル"Fuckin' Problems"は、全米チャート最高位8位を記録するヒットとなった。さらに2015年にリリースした通算2作目『At. Long. Last. A$AP』も同様に全米アルバムチャートBillboard 200の首位を獲得する。2018年にリリースした通算3作目『Testing』では、ほとんどの曲で自身がプロデュースに参加しており、音楽プロデューサーとしての力量も発揮している。A$AP Rockyが重要な理由
2007年にA$AP Mobのクルーの一因となったA$AP Rockyは、音楽・ファッション・アートなどあらゆるものに対する自身の興味を、ブランドイメージに結び付けることに2010年代で最も成功したラッパーの一人である。一方で、自身にラップを教えてくれた兄の死、母親や姉とともにシェルターを転々としながらクラックを売って生計を立てていた過去は、彼がストリートで生きた事実を物語っている。2010年代を象徴する新世代のラッパーとしてシーンを牽引したA$AP Rockyはヒップホップを革新し、新たな領域へと導くことに成功した。その革新は音楽的側面のみならず社会的側面にまで及ぶ。2016年、彼はオーヴァードーズで自身の姉を亡くしている（彼の想いは最新作『Testing』収録の"Purity"でも綴られている）が、彼はドラッグをしないことを公言してもいる。また、彼は2015年の時点で『SHOWstudio』とのインタヴューの中で、フェミニズムに対して理解を示している。「主に、この世界は男性優位だ。いつかは、みんな『あぁ、彼女はヴァギナがあるから、彼女にはできないよ。彼にはできるけどね』みたいな考えを気にすることはなくなると思うよ。前にも言ったことがあるけど、変わり始めているんだ」
A$AP Rockyはそのキャリアの中で、ホモフォビアではないかという批判を受けることもあったが、明らかな誤解である。キャリアの初期である2011年の時点で、「かつてはホモフォビックだった」と認めたうえで、『Complex』に自身の意見を語っている。「ホモフォビックでいれば多くの時間と友情を失うことになるだろう。セクシャリティー的な意味での一種の人種差別主義者ってことだからね」彼は2013年にも『Interview』誌に改めてLGBTをサポートする発言をしている。「2013年だぜ。恥ずかしいよ。今でもみんな、この話題で興奮してるんだからさ。クレイジーだ」
A$AP Rockyの独自性は、彼の社会的意義を持った発言、もしくはプラダからアレキサンダー・ワンまで様々なブランドを着こなすファッションアイコンとしての存在のみならず、音楽性にまで及ぶ。デビュー作の時点で、Florence WelchやSkrillexと言ったジャンルを跨いだアーティストとのコラボレーションで、彼はヒップホップのアウトサイダー的立ち位置を築いている。さらなるセカンド作では、ストリートミュージシャンだったJoe Foxをその場でスカウトして多くの曲で起用する大胆さを見せながら、自身の音楽性をさらに飛躍させている。勿論Rod StewartやMobyなどのサンプリングでの引用を耳にすれば、彼の音楽的素養の深さは自ずと明らかになってくるだろう。
彼が愛されるラッパーとなった理由を語るのに、これらはもしかしたら必要ないかもしれない。彼は自分が何者かわかっている。彼のラップは常に冷静だが、その冷静さはステージ上でも変わることがない。しかし、それがアーティストとしての彼の価値を下げることにはならない。むしろそれが、彼のブランドとなった。「知らないやつのために、前言ったことを繰り返すけど、俺はこれまででマジで最高のアーティストだぜ」
A$AP Rockyはただラップをするためにラップをしているわけではない。彼は常に未来を見据えている。天才がゆえに時に迷走するKanye Westに不安を感じたとき、別にKanye Westと比較しているわけではないのだが、私たちにはA$AP Rockyがいることを思い出そう。
参考記事
・A$AP Rocky Takes Us To Hometown Harlem Block Where His Brother Was Shot (MTV)
・Who is ASAP Rocky? (Complex)
・14 Male Allies To The LGBTQ Community (Billboard)
・Interview: Joe Fox Talk Working With A$AP Rocky and How He's Handling His Sudden Fame (Complex)
A$AP Rockyのベスト・ソング10曲
20. Purple Swag (2011) Produced by A$AP Ty Beats19. Phoenix (2013) Produced by Danger Mouse
18. Angels (2013) Produced by Amsterdam
17. Telephone Calls feat. Playboi Carti, Tyler, The Creator & Yung Gleesh (2016) Produced by Plu2o Nash
16. Cocky feat. Gucci Mane & 21 Savage (2018) Produced by Hector Delgado & London On Da Track
15. Fashion Killa (2013) Produced by The-Dream, A$AP Rocky, Friendzone & Hector Delgado
14. Brand New Guy feat. Schoolboy Q (2011) Produced by Lyle Leduff
13. Praise The Lord (Da Shine) feat. Skepta (2018) Produced by Skepta
12. Jukebox Joints feat. Joe Fox & Kanye West (2015) Produced by Che Pope & Kanye West
11. Purity feat. Frank Ocean (2018) Produced by Finatik N Zac, Dean Bluny, A$AP Rocky & Hector Delgado
10. Long Live A$AP (2012) Produced by Dr. Dre, Jim Jonsin & Rico Love
09. Multiply feat. Juicy J (2014) Produced by Curtis Heron
08. Peso (2011) Produced by Jimmy Jam & Terry Lewis & A$AP Ty Beats
07. Lord Pretty Flacko Jodye 2 (LPFJ2) (2015) Produced by Nez & Rio
06. Wild For The Night feat. Skrillex & Birdy Nam Nam (2013) Produced by A$AP Rocky, Birdy Nam Nam & Skrillex
05. L$D (2015) Produced by Finatik N Zac & Jim Jonsin
04. A$AP Forever feat. Moby (2018) Produced by Hector Delgado & A$AP Rocky
03. Goldie (2012) Produced by Hit-Boy
02. Everyday feat. Rod Stewart, Miguel & Mark Ronson (2015) Produced by Emile Haynie & Mark Ronson
01. Fuckin' Problems feat. Drake, 2 Chainz & Kendrick Lamar (2012) Produced by 40 & Drake
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